(109)ハックルベリー
ハックルベリー(ナス科)花期(8月~9月ごろ)
私が、南瓜やジャガイモを植えている畑に、雑草として「イヌホオズキ」が、あちこちにある。
このイヌホオズキを見ると、マリちゃんのことを思い出す。
3年前のある日、幌延の下沼に「ヒシクイが来たかなぁ」と、観察に行った。その帰り、豊富町のマリちゃんの家の前を通ってみた。玄関の横の窓の下に見かけない植物が植えられていた。
そこで、声をかけてみた。数年前から ご自分のお母さまの介護をしていたので、たいていは、在宅している。「マリちゃん、この植物なぁに?」と聞いてみた。
「ハックルベリーっていうの。種を貰ったから植えてみたの」と、言う。聞きなれない名前だった。「これ、巨大だけどイヌホオズキに似てるね」と言ったら「さすが!その種類なの」と、言う。「イヌホオズキ、有毒だと思ったけど、大丈夫なの?」「ジャムにしたら大丈夫らしい。あげるよ」と5個ぐらい実を貰ってきた。
その翌年の冬、お母さまは、98歳でなくなった。仏前に、お参りさせていただいた。
そのとき、マリちゃんが「母は、本当の老衰で亡くなったの。眠るように逝ったの。亡くなる、ちょっと前に、私の人生、幸せだったと、言ってくれたの」と、涙ぐんで言った。
その一年前に亡くなった、お父さま。その両方の介護に対する心からのお礼の言葉だったのでしょう。
そんな、マリちゃんが、21年の暮れ「重い病気らしい。豊富の病院にいる」と、教えていただいたのだが、12月の雪道は、なかなか見舞いにも行けなくて、気を揉んでいた。
翌年の1月 マリちゃんが亡くなったと連絡があり、夫のサトシさんに電話してお花を届けさせてもらった。マリちゃんは、69歳だった。
ご自宅で、ピアノ教室もしていたマリちゃん、会社経営のサトシさんの人柄もあり、大勢のお参りがあったと聞いた。最近の私は、冬は豊富まで車を走行させるのが、しんどい。しかも、夜は怖い。葬儀の参列も出来ず申し訳ないことだった。
四十九日を終えたとき、サトシさんからお手紙が来た。自分の余命を知ったマリちゃんが、闘病中の1年半、家事などまったくできないサトシさんに、しっかりと教え込んだと書いてありました。一人遺されるサトシさんが何より心配だったのでしょう。教える方も、教わる方も、どんな気持ちだったのでしょう。このお手紙に、自然観察などでの仲間たちも、みんな涙した。
昨年の12月のある日、道路状態もいいので もうすぐ一周忌だなぁと、お花を持って訪ねた。
ちょうど、お昼どきだったのでサトシさんは、タイマーをかけて麺を茹でているところだった。
「しっかり、やっているのね」と私が言うと「うん、やってる。だけど最近は、忘年会の誘いが多いんだ」と笑っていた。前年は、忘年会どころでなかったのでしょうね。
最近は、私よりも ずっと若い人が亡くなる。本当に、悲しいことだ。
<遺されし椅子が寒いと言ってゐる>2022.1月
<あの人もこの人も逝き山眠る>2022.12月
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